令和7年9月定例会
意見書・決議
有人国境離島法の改正・延長に関する意見書
現行の有人国境離島法(「有人国境離島地域の保全及び特定有人国境離島地域に係る地域社会の維持に関する特別措置法」)は、令和8年度末をもって期限切れとなる。
有人国境離島法は、平成28年に、「有人国境離島地域の保全及び特定有人国境離島地域に係る地域社会の維持に関する特別の措置を講じ、もって我が国の領海、排他的経済水域等の保全等に寄与すること」を目的に議員立法で制定され、平成29年4月の施行以来、「対馬」「壱岐島」「五島列島」の3地域、40島からなる県内特定有人国境離島地域の地域社会の維持・振興に大きな役割を果たしてきた。
本県においては、法施行と同時に創設された国の交付金等を最大限に活用しながら、関係市町と一体となって、雇用機会の拡充をはじめ、航路・航空路の運賃低廉化、輸送コストの支援、滞在型観光の促進などに全力で取り組み、その結果、これまでの8年間で、1,600人を超える新たな雇用の場が創出され、一部の市町においては人口の社会増が達成されるなど、地域の活力向上や雇用の確保、交流人口の拡大等において成果が現れている。
しかしながら、進学や就職に伴う若者の転出、自然減の拡大に伴う人口減少が本土地域以上に進んでおり、本県当該地域が抱えている構造的な課題の解決には至っておらず、このまま人口が減り続ければ、将来的に無人化する離島が増えることも懸念される。
有人国境離島地域の中でも、本土から遠隔の地に位置し、かつ、人口が著しく減少している特定有人国境離島地域は、一度無人化すると、我が国の領海等の保全等に関する活動の拠点としての機能の維持が著しく困難となる。
引き続き、特定有人国境離島地域が、我が国の極めて重要な活動拠点としての機能を維持し、継続的に居住可能となる環境が整備されていくためには、有人国境離島法の改正・延長が必要不可欠である。
よって、国におかれては、特定有人国境離島地域が果たす国家的意義や本県におけるこれまでの取組の成果をご賢察いただき、単なる現行法の改正・延長にとどまらず、支援策の充実・強化を伴う法改正が行われるよう強く要望する。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
令和7年10月6日
長 崎 県 議 会
(提出先)
衆議院議長 額賀福志郎 様
参議院議長 関口 昌一 様
内閣総理大臣 石破 茂 様
財務大臣 加藤 勝信 様
農林水産大臣 小泉進次郎 様
国土交通大臣 中野 洋昌 様
内閣官房長官 林 芳正 様
私学助成の充実強化等に関する意見書
私立中学高等学校は、建学の精神に基づき、時代や社会の要請に応じた特色ある教育を展開し、我が国の公教育の発展に大きな役割を果たしてきた。
その一方で、深刻な少子化が進んでおり、本県及び我が国がこれからも発展していくためには、将来を担う子供たちの資質・能力の育成が重要であり、そのために学校教育が果たす役割はこれまで以上に増しているが、私立中学高等学校を取り巻く状況をみると、様々な課題が山積している。
本県の私立中学高等学校では、直面する課題に対応するため、学校経営の一層の効率化に努めているが、私立学校の特色ある教育を推進する観点からも、経常費助成のこれまで以上の大幅な拡充が急務となっている。また、ICT環境の整備や学校施設の耐震化及び空調換気設備の整備等についても、国による支援の充実が不可欠である。
また、骨太の方針に明記された「いわゆる高校無償化」が実現すれば、子供たちが自由に学校を選択できる機会が保障されるが、私立学校が多様で質の高い教育を実践していくためには、合理的根拠に基づく授業料の引き上げは必要である。加えて、幼稚園から大学まで授業料の無償化が進められる中、私立中学生への就学支援制度の創設が求められている。
公教育の一翼を担う私立学校が、国の進める教育改革に的確に対応し、新しい教育、特色ある教育を提供するためには、多大な予算が必要となるが、少子化による生徒数の大幅な減少等もあって、私立学校の経営は厳しい状況にある。
とりわけ長崎県の私立学校は小・中規模が多く財政基盤が脆弱であり、また、本県の人口減少は全国を上回るペースで進んでいることから、私立学校を取り巻く環境は一層厳しさを増すものと見込まれている。一方で、若者の県外流出など人口減少に歯止めをかけることは本県が抱える喫緊の課題であるが、県内就職割合が高い私立高等学校は、地域における若者の定着に大きな役割を果たしている。
私立学校が、今後とも我が国の学校教育の先駆的実践と健全な発展に寄与し、将来を担う優れた人材を育成するためには、財政基盤の安定が必要不可欠である。
よって、国におかれては、「経済財政運営と改革の基本方針 2025」において、「公教育の内容や質を充実」「物価上昇等も踏まえつつ私学助成等の基盤的経費を確保」と言及されていることや、私学振興助成法第1条の「教育条件の維持向上」「保護者の経済的負担の軽減」「経営の健全性を高める」の趣旨を踏まえて、私学助成に係る国庫補助制度をはじめとする様々な支援が一層拡充されるよう、強く要望する。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
令和7年10月6日
長 崎 県 議 会
(提出先)
衆議院議長 額賀福志郎 様
参議院議長 関口 昌一 様
内閣総理大臣 石破 茂 様
総務大臣 村上誠一郎 様
財務大臣 加藤 勝信 様
文部科学大臣 あべ 俊子 様
内閣官房長官 林 芳正 様
「ガソリンの暫定税率」廃止に関する意見書
多くの国民が物価高による家計負担の軽減を求めている状況を背景に、「いわゆるガソリンの暫定税率」(以下「ガソリンの暫定税率」という)の早期廃止に向けた議論が与野党間で加速している。
しかしながら、「ガソリンの暫定税率」による税収は、揮発油税、地方揮発油税のほか、軽油引取税をあわせて約1.5兆円と見込まれており、地方のインフラ整備や維持管理、老朽化対策等にも充てられる重要な財源となっている。また、このうち地方の財源は、軽油引取税及び地方揮発油譲与税を合わせて約5千億円と試算されており、財源の乏しい地方にとって極めて貴重なものとなっている。
一方、令和7年6月に閣議決定された「第1次国土強靱化実施中期計画」では国土強靱化の推進が特に必要となる施策の事業規模として今後5年間で前計画の1.3倍に相当するおおむね20兆円強程度が謳われているが、安定的な地方財源が確保されなければ、県民の生命・財産・暮らしを守るための社会インフラの更新や老朽化対策、防災・減災事業などの進捗に大幅な遅れが生じる恐れがある。
また、本県はもとより、各地方自治体においても既に当該財源をもとに令和7年度予算を編成し、各種事業を実施する中での廃止は財源不足を招き、地方行政が機能不全に陥ることも懸念される。
ついては「ガソリンの暫定税率」の廃止においては、下記事項を講じられるよう強く要望する。
記
・「ガソリンの暫定税率」の廃止については、安定的な行政サービスの提供及び財政運営を担う地方への影響等を十分に考慮し、財源論なき減税を行わないこと。
・地方の減収に対しては代替となる恒久財源を措置するなど、国・地方を通じた安定的な財源を確保すること。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
令和7年10月6日
長 崎 県 議 会
(提出先)
衆議院議長 額賀福志郎 様
参議院議長 関口 昌一 様
内閣総理大臣 石破 茂 様
総務大臣 村上誠一郎 様
財務大臣 加藤 勝信 様
国土交通大臣 中野 洋昌 様
内閣官房長官 林 芳正 様
国土強靱化担当大臣 坂井 学 様
内閣府特命大臣(防災)
